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所有者が認知症になった場合、どうしたらいい?

実家の所有者が認知症になった場合

実家が空き家となり売却するケースとして多いのは、相続や遺贈によって売却するケースです。相続や遺贈によって売却する場合は、所有者であった被相続人や遺贈者から新しい所有者へ名義変更をし、売却が可能となります。

(画像はイメージです)

しかし、近年所有者が認知症となり、その売却が困難となるケースが多く見られています。内閣府が発表した平成29年版高齢社会白書によると、2012年では認知症高齢者数が65歳以上の場合約7人に1人でした。その数値は年々増加傾向にあり、2025年には約5人に1人となる推計結果もあります。

実家の所有者が認知症になった場合、どうしたら良いのでしょうか。老人ホームなどに入居が決まり、空き家となるため売却を検討した際、売却は可能なのでしょうか。

先に記述した通り、所有者が認知症になると、その空き家の売却は困難となります。認知症になった所有者がその家に住み続ける場合は、急いで何かをする必要はありませんが、所有者の資産管理の観点から成年後見制度を利用して、後見人を選任した方が良い場合があります。

また認知症になった所有者が老人ホームなど別の場所に住むことが決定し、実家が空き家になるため売却をする場合も、成年後見制度の任意後見制度を利用し、後見人を選任する必要があります。

成年後見人制度とは?

成年後見人制度とは、判断能力が不十分な認知症、知的障害、精神障害といった方々を、保護し、支援するための制度です。判断能力が不十分なため、その人の保有する預貯金や不動産といった財産を不利益な契約や、悪徳商法から守る役割があります。

成年後見制度には、大きく分けると法定後見制度と、任意後見制度があります。今回の所有者が認知症になった場合に有効なのは、任意後見制度です。しかし、この任意後見制度は、所有者が認知症になってからではなく、所有者本人に判断能力があるうちに活用する制度となります。

任意後見制度とは?

任意後見制度とは、本人(この場合は所有者)に十分な判断能力があるうちに、あらかじめ本人が選んだ任意後見人に、自分の生活や療養看護、財産管理などに関する代理権を与える契約をいいます。この契約を結ぶことで、本人の判断能力が不十分になった場合に備えることができます。

あくまでも所有者にまだ判断能力があり、所有者が選出した人物であるということが肝心です。所有者の意志により選ばれた人物が、家庭裁判所の判断により任意後見人になれるということです。

この代理権を与える契約を任意後見契約といい、公証役場にて公証人の作成する公正証書で契約を結んでおくものです。

公正証書にすることにより、本人が認知症などにより判断能力が低下したあとに、任意後見人が家庭裁判所にて選出された任意後見監督人(多くの場合は弁護士)のもと判断能力の低下した本人の意思に従った適切な保護や支援をすることが可能となります。

任意後見人になれるのは誰?

任意後見人になれる人は、原則、本人(この場合は所有者)が選んだ人なら誰でもなることができます。しかし、本人が選んだ段階では任意後見受任者となり、家庭裁判所で適切な人物と判断され任意後見人となります。

反対に、任意後見人になれない人として例をあげると、未成年者、家庭裁判所で解任された法定代理人・補佐人・補助人、破産者、本人に対して訴訟をしている人やその配偶者・直系血族、行方の知れない人は任意後見人にはなれません。

所有者が認知症などにより判断能力が低下すると、その後の空き家の管理や売却は困難なものになります。「相続が発生したら」、「認知症になったら」という会話は親が元気な内はしにくいものです。

しかし、なってから話し合うことはできません。不必要な争いや、手間、費用が降りかかる前に、1度所有者とその家族がしっかりと話し合う必要があります。

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